「田無ぼうち唄」は西東京市田無に伝わる農作業唄です。ぼうちとは棒打ちのことです。大正時代から昭和初期、この辺りの農業は水田に乏しく、畑を使った麦の栽培が主力で、田無の農家は刈った麦を庭へ運んで、「クルリ棒」という棒でたたいて実やノゲ(針のような突起)を落としました。棒打ち作業は6月に大麦、7月に小麦の順で、炎天下での作業は厳しく、人々は掛け合いでこの唄を歌いながら疲れを癒しました。
この「ぼうち唄」は昭和7、8年、動力脱穀機が入り、棒打ち作業が姿を消すにつれ自然と消滅していきましたが、昭和59年11月に田無民謡連盟が、ゆくゆくは消えてなくなるこの貴重な伝統文化を正しく後世に伝えていこうと、市内の古老7人を招き、録音が行われました。
その後は西東京けやきの会を中心に地元田無で引き継がれ今に至っていますが、東京において、かつての農作業の様子がそのまま残っているという意味でも大変貴重な踊りです。